【No.】 309
【ストレッサー】 和文タイプライターの悲劇
【内容】 突然、自宅に刑事さんの訪問があり、自宅に上がって和文タイプライターが任意捜査されて嫌な気分になる
【分類】 E 身近な出来事
【効果】 ★★★
【対処法】 犯人が使用した和文タイプライターとは、明らかに違う機種ということを刑事さんに確認してシロだったが、苦笑いするしかない
【ストレッサー型】 3 クヨクヨ過去悔恨型
【解説】 若かりし頃、将来はプラネタリウムの解説員になりたいと思ったのか、小学生の頃から星座ごとの天体の見どころを解説した文章を作成しておりました。その後、10年間で何度か修正をしました。全部で星座は88個あるのですが、全星座の解説文を合わせると、1冊の本ができるレベルになっていました。
今では文章をパソコンのWordで作成すれば、簡単で綺麗に印刷できますが、当時は、ワープロは存在はしていましたが、個人には高嶺の花で手が届きませんでした。ちょうど、和文タイプライターの廉価版が98000円で販売していたので購入しました。
本体の配列ボードには、ひらがな、カタカナ、英数字、それと漢字が2000個以上印刷されており、それを可動式の小さな四角い窓のあるファインダーを右手で動かして選択したい文字に合わせて、レバーを左手でガチャンと押してタイプ打ちをするものでした。漢字はあいうえお順に並んでいた記憶がありますが、必要な漢字を見つけるのはなかなか大変な作業でした。
今では、A4用紙1ページ分完成するのに、考えながら30分くらいで出来ますが、タイプライターでは1時間以上かかっておりました。それもミスタイプをすると、それまでの苦労がすべて水の泡になってしまう状況でした。
ただ、小生は原本をコピーすることを前提に考えていたので、ミスタイプしても白い修正液で原本を修正すれば、何とか綺麗にコピー機で複写が可能ということを確認していたので、いささか楽な気分で作業していました。
結局、プラネタリウム用の解説文は、A5判両面コピーにして200ページ分で2000円、タイトル金文字入り上製本代が4000円の合計6000円で、自分だけの自費出版の本が1冊製作できました。その後も、和文タイプライターはカセットテープやビデオテープのラベルのタイトル打ちに使用していました。
1980年代の終り頃だったと思いますが、突然、自宅に刑事さんの訪問がありました。警察手帳を見せてくれましたが、階級は警部補でアラフィフの目つきが鋭い人でした。
訪問理由は、当時の世間を騒がせていた誘拐・脅迫事件が続けてあって、食品メーカーが狙われていました。狙われたメーカーの商品がスーパーの棚から撤去されるという社会現象にもなりました。
脅迫文に使われたメーカーが同じ和文タイプライターを小生が持っているということで、捜査に訪れたということでした。恐らく、和文タイプライターメーカーのユーザー登録を手がかりにやってきたと思われます。
小生が持っている和文タイプライターは10万円前後の廉価版で、犯人が使用したのは同じメーカーの市場価格が20万円前後の高い機種だということが報道で明らかになっていました。任意捜査でしたが、小生は犯人ではないので、刑事さんを自宅に上げて和文タイプライターを見てもらいました。
その場で、使用機種が違うということで刑事さんの確認も取れて、小生の「シロ」が明らかだったのですが、念のために、刑事さんの指定した文字を10文字程度用紙にタイプ打ちして、刑事さんは持ち帰りました。
その後、その思い出の和文タイプライターは、自宅アパートが床上浸水の被害で水を被って失ってしまいました。
結局、その事件は時効が過ぎて迷宮入りになってしまいました。後に、捜査対象者は12万5千人に及んだということを知り、その内のひとりに小生が含まれているのかなと思うと、苦笑いをするしかありません。
今振り返ってみると、小生にとって和文タイプライターの悲劇は3回ありました。1回目は警察の捜査対象になってしまったことです。2回目は自宅が洪水に遭ってしまって悲しみのお別れになってしまいました。そして、3回目はパソコンの普及により、和文タイプライターの存在を知らない人が増えて、存在そのものが忘れ去られようとしていることです。
いつもお読みいただきありがとうございます。
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